【千葉市動物公園】子供だけではなく、大人にも来てもらいたい。より親しまれ、より愛される動物公園へ。【チバノサトの人々】

2019年4月1日に園長に就任した鏑木一誠さんは、千葉市動物公園としては初めて公募によって選ばれた園長です。

就任前の職歴はパソコン関連事業一筋だったという鏑木園長。異業種からの挑戦の日々をどのように感じているのでしょうか。

 

「企業人としての経験を動物公園の運営に活かしたい!」

大学卒業後、(株)東芝に入社。以来、パソコン関連事業一筋だったという鏑木園長。
今ではレッサーパンダの風太くんなど、たくさんの動物たちがいる千葉市動物公園の園長です。
まったく畑違いの動物園という業種に応募された理由は何だったのでしょうか。

 

「私は、地域活動というのに興味があったので大学では地域社会学を専攻しました。
だから、いずれはそういう領域に携わりたいという思いを若い頃から持っていました。
公設公園の千葉市動物公園園長への応募理由の1点目はこの点です」

 

当時はまだ黎明期であったパソコン事業の立ち上げをはじめ、営業や新規事業の創出等で本社部門の責任者やグループ企業の役員を務めたというキャリアは、新しい職場でどのように活かされるのでしょう。

 

「千葉市動物公園では、平成26年からリスタート構想というのを立ち上げていることを知りました。これを私なりに捉えると、『事業再生』をしているということです。

そうであるならばこれまでの企業人としての経験が活かせるのではないかと考えたわけです。これまでとは全く違う領域に携わることで、新たな文化に触れ、新しいリレーションが生まれることは、これからの人生も更に豊かなものにしてくれるものと思うのです。

もともと生き物や自然が好きでしたし、動物公園は幾度も通った思い出深い場所であることも応募の大きな理由です」

「畑違いから来たからこその気づき、来園者目線を大事にしたい」

動物の専門性に関してはまだまだ勉強中という鏑木園長。
ですが、園内を歩くと、畑違いから来たからこそのいろいろな気づきがあるとのこと。

 

「経営の基本は保有資産の活用最大化です。埋もれているポテンシャルに光を当て、創意工夫で再構築していくことが重要です。たとえば、猿(霊長類)のコレクション数は日本でも有数です(23種149点 *参考日本モンキーセンター(世界一)58種869点/2020年6月現在)。しかし、ガイド板には名前と、どこに棲んでいるというような説明だけです。

どういう猿が、どういう特徴をもって、他の猿とどこが違うのかというようなことを時代に即したツールの活用も検討しながら情報発信力を高めていく。「知的欲求の連鎖」を意識した施策展開が重要だと思います」

 

千葉市動物公園は、緑豊かな空間というのも魅力の一つ。鏑木園長は、園内を周ってみると、使われていないベンチがたくさんあることに気づいたといいます。このベンチを移設して、動物観察と「癒しと憩い」のスポットを作りました。

写真の通りとっても見晴らしがよく、心安らぐ場所になっていました・・・!

「ダチョウやシマウマ、キリン、ゾウなどを自然に近い状態で展示している草原ゾーン(写真左上)は、うちの見どころの一つです。このパノラマを一望する展望デッキのケヤキの下にベンチを置いて、自然の風を感じながら広大な草原と動物を観察できる場所もつくりました。ベンチを移設しただけで、新たな魅力を創出することができるのです」

次の人気者は小さな猿のショウガラゴ

千葉市動物公園といえば、真っ先に名があがるのがレッサーパンダの風太くん。16歳になった今でも相変わらずの人気で、風太くんと同じような立ち姿を見せる子や孫たちも育っています。

 

2019年のゴールデンウィークに実施した『ZOO-1グランプリ 人気者は誰だ!』というイベントは、普段あまり注目されない動物にスポットを当てて、その中から人気動物をつくっていこうという企画でした。これは職員から出た企画だといいます。

 

「いろいろな種からエントリーする動物を選び、それぞれの動物に愛称を付け、来園者に人気投票をしてもらいました。優勝したのは、目が大きいのでラブリーアイと名付けた猿の仲間のショウガラゴでした」

新たな人気者が誕生して、その後のアイデアも続々と出てきているようです。

「ショウガラゴが優勝したら、ショウガラゴのぬいぐるみを作ったら面白いんじゃないかとかいう案が出てきました。創意工夫で何かが動き出すと次のアクションプランが具体化するという好循環が生まれつつあります」

展示の工夫やイベントの充実、タイムリーな情報発信で新しいお客様を呼び込む

2020年夏に、チーターとハイエナが来て、アフリカ平原ゾーンという一大コーナーができました。鏑木園長は、新たな魅力が加わるこの機会に、「年間パスポート購入者を増やす様々な施策展開をしたい!」と意気込んでいました。

 

「年間パスポートというのは、園の価値認知の1つのバロメーターだと考えています。購入を促進するためには、年間を通じて楽しめる動物公園であることをわかっていただかなければなりません。

そこでポスターやホームページなどを通じて、これから先、こんなイベントを用意しています、来年はチーターとハイエナがやって来ます、ということをアピールをしました。その結果、4~8月の年間パスポート購入者は、前年比約150%となりました」

 

「園内を颯爽と駆ける様子、是非とも見てみたいですね・・・!

 

来園者は家族連れが中心ですが、大人向けのイベントを用意するなど、新たなお客様の獲得にも取り組まれています。

これからもどんなイベントが行われるのか、楽しみですね!

「モノレールの先頭は森の中を入っていくようでとても気持ちがいいんです」

平成6年から千葉市花見川区に住んでいるという鏑木園長。千葉市の魅力は、都会的な一面も持っていながら、一方で公園も多く、自然が豊かなことだといいます。

「自宅から近いので幕張海浜公園はよく行きます。泉自然公園も好きだし、フォレストアドベンチャー千葉にも行ってみたい。近くには千葉公園もあります。千葉市は都会でありながら、こんなにも豊かな自然に恵まれています」

たしかに、千葉市の豊かな自然は心が洗われますよね。取材で足を運ぶ度に、都内からこんなに近いのに緑が広がる地域があるんだ、と改めて驚かされています。

 

最後に、園長に千葉市の好きなところをお伺いしました。

「千葉駅からモノレールで通勤しています。いつも先頭に乗るのですが、スポーツセンター駅から動物公園駅に向かう車窓は、浮遊感とともに森の中に入っていくみたいですごく気持ちいいんです。左側に緑豊かな動物公園の大地が見えてくるとワクワクします。桜の時期には、桜並木を上から見るという絶景も楽しめます!」

新しい視点で改革を進めていく鏑木園長。何か新しいことが始まりそうな予感がして、何度訪れても楽しい動物園になりそうです。

鏑木園長、ありがとうございました!

「千葉市動物公園」のアクセス、基本情報

千葉市動物公園(ちばしどうぶつこうえん)

千葉市若葉区源町280番地

千葉駅から千葉都市モノレール12分の動物公園駅下車、徒歩1分

9:30~16:30(入園は~16:00)

水曜(祝日の場合は翌日)休

入園大人(高校生以上)700円、中学生以下無料