【加曽利貝塚博物館】 ロハスでナチュラルな縄文の生活をのぞいてみませんか?【チバノサトの人々】

今は西暦2019年、キリストが生まれたといわれる時代から約2000年しか経っていません。しかし昔の日本には、その数倍、約1万3000年も続いた縄文時代があったのです。

そんな縄文時代の展示が見られるのが、今回訪ねた加曽利貝塚博物館。当時の暮らしに触れられる体験も目白押しで、タイムスリップ気分を味わいながらSNS映えが狙えちゃうかも?

さっそく、学芸員の長原 亘さんにお話をお伺いしました。

長原さんは見学者対応、各種展示業務をはじめとした学芸業務のほか、公園の管理などに関する業務や公務員としての事務なども行っています。

 

そもそもなぜ貝塚は千葉県に多いの?

加曽利貝塚は千葉県若葉区にある、縄文時代中期(今から約5000年前)の北貝塚と、後期(今から約4000年前)の南貝塚が連結するように隣接する日本最大級の貝塚です。

全国には約2400カ所の貝塚が確認されていますが、その約6割は千葉県で発見され、千葉市には約120カ所の貝塚があります。
なぜ千葉県なのでしょうか?

「東京湾は地形的に遠浅の海岸ができやすいのです。といっても、縄文時代の村々が海岸線近くにあったということではありません。当時の人々は丸木舟で川を下って海岸で貝を採取しました」

わざわざ舟で取りに行くほど、貝は当時の生活に必要だったようです。

でも、一体何に使っていたのでしょうか?

世界に誇る日本のあの文化は縄文時代が起源!?

「当時の人々が主に採取していたのはイボカサゴという、大きくても2cm程の巻き貝でした。肉や魚、根菜などを土器で調理する際に、イボカサゴを出汁として使っていたと考える研究者も少なくありません」

日本が世界に誇る出汁文化は縄文時代にもあったのかも知れませんね。

貝層断面観察施設では厚く積み重なった貝塚の断面を見ることができます。
じっくり観察すると貝殻のほかに骨なども見ることができますよ。

太古の人々の知恵に触れる

このほかに、約15.1haの加曽利貝塚縄文遺跡公園内では、復元された竪穴住居や縄文式土器、発掘調査風景の名残をとどめる住居跡観察施設、動物の骨で作られた釣り針、土偶、石で作られたアクセサリーなどが博物館で見学できます。

竪穴住居はもちろん内部に入るのもOK。中央に炉のある内部は驚くほどに広々としていました。
土を50cmほど掘り下げてあるのは気温を一定に保つためとのこと。

見学に出かけた日はあいにく雨模様でしたが、そんなとき内部に水は入ってこなかったのでしょうか?

 

「掘り下げた土で周囲に土手を築くなど工夫をして水を防いでいたのでしょう。縄文時代の人々の工夫には驚きますね」

なるほど…「温故知新」とはまさしくこのことですね! 現代にまで息づいている生活の知恵もあるかもしれないと思うと、なんだかロマンがあります

ずっとこの仕事を続けていたい

貝塚など縄文時代のことを熱くお話いただいた長原さんですが、もともとは古墳時代の研究をされていたんだとか。

歴史の研究者というと室内にこもって本を読んで論文を書いて…というイメージをされる方も多いかもしれませんが、現地での発掘調査など外に出る機会も多いようです。

好きなことをさせてもらっているので、特段苦労は感じません。発掘調査中、良い写真を撮ろうと夢中になって穴に落ちたことがありますけどね(笑)」

調査中のちょっとした事件も明るく話してくださいました。

もちろん貝塚のことも、素人質問でもとても丁寧にお話をくださり、長原さんの歴史研究への愛着がひしひしと伝わってきました。

「特に自分の好きなことが具現化できたときや、論文をうまくまとめられた感じられたとき、発掘調査をしていて珍しいものが見つかったときなどの喜びは大きいです」と長原さん。

「論文は後で読み返すと恥ずかしい事を書いてしまったと後悔するのが常ですが(笑)。それでもやっぱり面白いですし、5年後・10年後にもこの仕事を続けていきたいですね」

縄文時代には歴史のロマンがいっぱい!

「土器にしろ土偶にしろ、そのほかのさまざまな道具類にしろ、縄文遺跡には歴史のロマンがいっぱいなんです。最近では縄文女子っていうらしいですけど、若い女性の見学者も増えていますよ」

そうなんです! 歴女に続いて、古墳や土器など、昔の時代の遺物に惹かれる女性客も増えているのだとか。

「特に、イベント時に開催される縄文服試着体験(無料、事前に要相談)は人気です。麻で織られた縄文服を羽織って、貝のネックレスなどを身に付けて、竪穴住居の前で写真を撮る。これはSNS映え間違いなしではないでしょうか」

約1万年前にも遡る時代の衣服を着られるのは、もしかしたらここ加曽利貝塚博物館だけかも?
きっと貴重な体験になるはず!

「もちろん展示をじっくり観察する方々も多いです。難しい文献を読まなくても残された品々を見れば、その時代の生活の様子が目に浮かぶ。誰にでもわかりやすい歴史学なのです」

ストレスにさらされることの多い現代人にとって、ロハスでナチュラルな縄文の生活は自然と憧れを持ってしまうものなのかも知れませんね。

縄文体験ができるイベントももりだくさん

加曽利貝塚では、毎月第2・4週の日曜には火おこし体験やアクセサリー作りなどの縄文体験、毎週日曜および祝日には子どもたちに人気の縄文ペーパークラフト教室など、さまざまなイベントが開催されています。

写真はペーパークラフト教室で作れる作品。スタンプの種類なども多く、自分だけのオリジナル土器が簡単にできちゃいます。

こういった手軽な体験を通して縄文時代に触れるのも面白いですよね。

千葉の人々の寛容さ

最後に千葉市でお仕事をされている長原さんに、千葉市の魅力を語ってもらいました。

「仕事でいえば、発掘調査の際に、気候や風土にあまり悩まされないこと。それから私はサトイモやタケノコが好きなのですが、そういった山の幸がおいしいのが嬉しいですね」

地域のグルメも満喫しながら、のびのびと千葉での仕事を楽しまれているようです。

「気候がよい県なので千葉市の人たちは、発想がスローです。大らかというか寛容というか、あまり切羽詰まった感がないと感じてきました。今では自分自身もそうなのかも知れませんけどね(笑)」

 

忙しない日常から少し立ち止まって過去を振り返るのも、きっと素敵な時間になるはず。

加曽利貝塚博物館ではそんな体験が手軽にできちゃいます。

あなたも縄文ロマンあふれるロハスな体験をしてみませんか?

特別史跡・加曽利貝塚博物館公園のアクセス、基本情報

 

特別史跡・加曽利貝塚博物館公園
(とくべつしせき・かそりかいづかはくぶつかんこうえん)

Tel:044-231-0129

URL:https://www.city.chiba.jp/kasori/

住所:千葉市若葉区桜木8-33-1

時間:9〜17時(入館は〜16時30分)

休館:月曜(祝日の場合は翌日)

料金:無料

アクセス:千葉都市モノレール桜木町駅から徒歩約15分